2020年10月16日(金)公開の「鬼滅の刃」は記録になるスタートになりました。
この映画は上映回数が極端に多いことが話題になりました。
公開直前に話題作りに成功していいニュースになりました。
上映館の数に加えて、上映回数も興行収入に影響があります。
1スクリーンだけで上映すれば、よくて2〜3時間に1回。
お客さんは時間が合わなければ断念するでしょう。
また満席となれば、見られないお客さんがでます。
上映回数が多ければ、時間が合ってみられるお客さんが増え、満席で見られなかったお客さんが減り、全体の興行収入は大幅に増えます。
(運転本数が少ないローカル路線は使いづらく、たくさん運転されている路線は使いやすいのと同様)
この複数のスクリーンを使って多数の上映ができたのは、新型コロナウイルスの影響で新作作品が少ないこともありますが、他の要因もあります。
◆現在の映画の上映はすべてデジタル
この場合の「デジタル」は、コンピュータグラフィックスや3Dといったもののことではなく、実際に映画館で上映する方法のことをいっています。
現在、映画の上映はすべてデジタル上映が行われています。
35mmフィルムと映写機は全滅しています。
ディスクに入っているデータをプロジェクターで上映しています。
デジタル化が進んでいるころは「デジタル上映」なのか「フィルム上映」なのか表記されている頃もありましたが、2013年にはすべてデジタルに移行しました。
2005年に開業したTOHOシネマズ府中にはフィルムをつないだ様子を見れる小部屋の窓がありましたが、今はカーテンが閉まっており、フィルム上映だったころの名残です。
映画フィルムは1本が20分ぐらいで6巻〜7巻あり、シネコンではつないでいました。
2017年のイオンシネマシアタス調布の開業にあわせて京王線調布駅の意匠がフィルムになり、開業のポスターではフィルムが舞っていましたが、既にフィルムはなくなっており、当初からデジタルのみです。
急速にデジタル化が進んだのは、フィルム上映のコストが大幅に削減されることにありました。
また、デジタル上映とフィルム上映が併存すると、配給会社は2種類の素材を作る必要が生じます。
これをできるだけ早くデジタル上映のみにすべく、業界で仕組みが整えられ、コストが急落する配給会社(実際に負担するのは製作委員会)に応分の負担を続けてもらい、それでデジタル上映機(プロジェクター)を用意し、全国津々浦々の映写機を置き換えました。
この仕組みで、わずかな期間で、フィルム映写機は全滅しました。
これがなければ、小さな映画館ではフィルム上映機が残っていたと思います。
全滅したというのは言いすぎかもしれません。
残っているかもしれないので、ほぼ全滅としておきたいと思います。
大手の商業用には新しいフィルム映画は作られておらず、フィルムで上映できる新作はありません。
フィルムはまさに製造する必要があります。
同時に上映するには映写機の分、フィルムが必要になります。
これをプリント費(P費)といいますが、上映館数が多い作品はこのP費が莫大でした。
デジタル上映の作品の実体は、ハードディスクに入っているデータです。
配給会社が映画館にハードディスクを送り、映画館はこれをサーバーあるいはセンターサーバーに取り込んでいます。
ハードディスクはデジタル映写機1台に1つ必要ということもありません。
映画館のサーバーに取り込んだ後は次の映画館に回すこともあります。
将来的には配信となる可能性もありますが、今は通信回線に対してデータ量が膨大であるため、ハードディスクで配送するのが現実的です。
配給会社は、作品とプロジェクターの番号と上映許可の日時を決めた暗号キーを映画館に送ります。これが一致することで、その上映が可能になります。
フィルム上映時代は「複数のスクリーンで同時に上映」するには何本ものフィルムが必要でした。
このフィルムの製造には日数がかかりますし、海外で生産もしていました。
ヒットしそう、ヒットしたで、急に増やすことができるものではなかったのです。
しかし、今はデジタル上映なので、既に本編を取り込んでいる映画館では、暗号キーを増やして発行してもらえば、複数のスクリーンで上映できます。
上映の予定がなかった映画館でも、希望すれば、すぐに届きます。
製造していたフィルムと違って、ハードディスクにコピーするだけだからです。
これによって、大ヒットした作品は、より拡大、大ヒットをすることができるようになりました。
過去の記録になっている映画作品とは、費用とモノ(フィルム)の制約条件、土俵が異なり、新たな世界になっているということになります。
「社会現象」が起きやすくなりました。
◆日本の映画の復活
この週末、「鬼滅の刃」の興行収入は日本以外の全世界の興行収入を上回ったそうです。
これから「同時期の他の映画作品」が受ける苦難は大変なものになると思います。
一般のお客さんは映画館で映画をみたらしばらく映画館で映画は見ません。
「社会現象」になる大ヒットする作品がでると、興行収入がその作品に集中し、時期がかぶる他の作品は影響を受けます。
しかし、しかしです。
映画業界は、春先「前年比▲100%」になりました。
日本は、他国と比べて新型コロナウイルスによる発症者、死者がとても少ない状態にあります。
この世界的なニュースにもなった出来事は、日本の映画業界、これは製作しているほう、映画を鑑賞するお客さんの双方をあわせて、日本の映画は「健在である」「復活する」ことののろしであろうと思います。
私はちょっと泣きました。
これから苦難を受けるほうですが、うれしかったです。
(そして「鬼滅の刃」の関係の方がうらやましいです。おめでとうございます)
うちの最近の「鬼滅の刃」グッズはこれぐらい・・。